
相続や会社清算(廃業)の税務を依頼する際、多くの方は「大きな税理士法人=安心」というイメージをお持ちかもしれません。
確かに、大手は組織力や専門部署の層の厚さがあり、大規模案件や標準化できる業務に強みがあります。
しかしその一方で、案件の内容や規模によっては「申し訳ありませんが…」と断られることもあるのが現実です。
その理由は単純で、「採算が取れない」「リスクが高い」「内部調整に手間がかかりすぎる」など、大手ならではの事情があるからです。
今回は、そうした大手が手を出しづらい案件の具体例と、なぜ個人税理士がそれらを拾えるのかをご紹介します。
1、小規模・低報酬の案件
・相続財産総額が数千万円〜1億円未満
・報酬が50〜100万円程度しか見込めない案件
・会社清算(廃業)(清算)でも純資産が数百万円〜1,000万円程度の法人
大手税理士法人は人件費や事務所運営コストが高く、時間単価で考えると小規模案件は採算が合わないことが多いです。また、若手スタッフが多く経験値の蓄積を重視するため、「教育効果の高い大型案件」に優先してアサインされます。
個人税理士の強み
人件費や管理コストが低く、小さな案件でも利益が出やすい。依頼者との距離も近く、時間単価に縛られず柔軟に動けます。
2、複雑な土地評価が必要な地方物件
・市街化調整区域にある土地
・道幅が狭く不整形で、セットバックや私道負担が必要
・農地・山林・ため池・墓地など特殊地目
・借地権割合や路線価補正率の判断が難しい
大手の場合、現地調査は別途費用や日程調整が必要で、地方物件だと移動コストも無視できません。
また、経験豊富な資産税部門のスタッフが少なく、標準化しにくい評価業務は嫌がられる傾向にあります。
個人税理士の強み
代表税理士自身が現地へ足を運び、柔軟に評価方法を選択可能。地元の不動産業者や司法書士とも直接連携できます。
3、相続人間で争いがある案件
・遺産分割協議が難航している
・家庭裁判所で調停や審判を行っている
・会社清算(廃業)時に株主や役員間で対立している
こうした案件では、税務以外に人間関係の調整が必要となります。大手はコンプライアンスやクレームリスクを避けるため、初期面談の段階で「お断り」となることが多いです。
個人税理士の強み
直接依頼者の話をじっくり聞き、必要なら弁護士や司法書士と即座に連携。関係者全員と一人ずつ会って調整できるフットワークがあります。
4、期限ギリギリ案件
・相続税申告期限(10か月)まで1〜3か月しかない
・会社清算(廃業)(清算)で公告や決算スケジュールが非常にタイト
大手は社内稟議やスタッフアサインに時間がかかり、短納期案件は内部調整だけで期限が迫ってしまいます。そのため、引き受け自体が困難。
個人税理士の強み
即日で動き出せるため、書類収集や関係者打ち合わせを圧縮スケジュールで進行可能。小規模だからこその即応性があります。
5、個人資産と法人資産が入り組んだ会社清算(廃業)
・法人解散時に社長個人との間で不動産や有価証券の売買・譲渡が発生
・社長借入金の免除益処理や繰越欠損金の有効活用を伴う決算
こうした案件は法人税・所得税・消費税が絡み、かつ登記や契約書整備も必要です。大手では部署間連携に時間とコストがかかり、非効率になりがち。
個人税理士の強み
1人で全体像を把握し、税務判断と他士業の調整をワンストップで実行できます。
6、相続と事業承継が同時進行
・経営者が亡くなり、同時に会社の承継や会社清算(廃業)を進める
・自社株評価・相続税・法人決算・登記・労務対応が一体化して必要
大手は案件ごとに担当部署が異なり、「相続税チーム」と「法人税チーム」で別々に対応。全体のスケジュール管理や一貫した戦略設計が難しいことも。
個人税理士の強み
全体像を俯瞰して、相続税と法人税の双方を同時進行で処理可能。依頼者にとっては窓口が一つで済みます。
大手と個人税理士、それぞれの棲み分け
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項目 |
大手税理士法人 |
個人税理士 |
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案件規模 |
数億円〜数十億円の資産規模に強い |
数千万円〜数億円まで幅広く対応 |
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得意分野 |
標準化しやすい申告・大口顧客・国際案件 |
柔軟性が必要な相続・会社清算(廃業)・特殊案件 |
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スピード感 |
内部調整に時間 |
即日対応可能 |
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コスト構造 |
固定費が高く小規模案件は非採算 |
固定費が低く小案件でも採算確保可 |
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顧客との距離 |
担当者を通すことが多い |
税理士本人が直接対応 |
まとめ
大手税理士法人が断る案件は、決して「質が低い案件」ではありません。
むしろ、土地評価や相続人調整、期限対応など、経験と判断力が必要な難易度の高い案件が多いのです。
個人税理士は、こうした案件に対して
・柔軟な料金設定
・迅速な意思決定
・顧客との密なコミュニケーション
・他士業との即時連携
といった強みを発揮できます。
もし、相続や会社清算(廃業)で「大手に相談したけれど断られた」「提案が画一的すぎて不安」という経験がある方は、経験豊富な個人税理士に相談してみる価値があります。